「肌」には奇跡の再生力が存在します

理想的な肌とは

最近は女性誌などでも「腸内フローラで美肌ダイエット」、「肌には美肌菌と悪玉菌がいる」などのキャッチフレーズで記事が取り上げられています。

皮膚常在菌を取り上げている雑誌の例

本来、理想的な肌とはどういうものでしょうか。いろいろな捉え方があるかと思いますが、一つには健全に新陳代謝されるサラサラ肌と言えます。

肘の内側の皮膚

あなたの肘の内側の皮膚を触ってみてください。肘の内側の皮膚は、サラサラしていますか?ベトベトしていますか?聞くまでもなく、肘の内側の皮膚はサラサラしています。

また、肘の内側の皮膚を近くからよく見てください。皮膚の上に、三角形の網目模様が見えますよね?それはまさにキメがある状態なのです。

そして、思い出してみてください。肘の内側は肌荒れを起こしたことがありますか?ニキビができたことがありますか?おそらく、99%以上の人は「いいえ」と答えるでしょう。

それはなぜでしょうか?

肘の内側の皮膚は、サラサラ肌であり、常に正常な新陳代謝をしているからなのです。

我々のスキンケアは、このサラサラした「肘の内側」の皮膚の状態を目指すべきなのです。

日々のスキンケアで、化粧水や乳液、クリームで肌をベトベトに保湿していませんか?本当に肌はそのような外部からの保湿を求めているのでしょうか?

理想的な肌は「サラサラした肌」なのです。本当の意味での正しいスキンケアは、「サラサラした肌」の状態を目指すべきなのです。

肌の新陳代謝とは

それでは、肌の新陳代謝とは具体的にどういうことでしょうか。表皮細胞はやがて角質細胞となり、これが1つ剥がれ落ちると下から新しい表皮細胞が生まれてきます。これが健全な新陳代謝と呼ばれるものです。つまり角質細胞が剥がれ落ちなければ新しい細胞は生まれてこないのです。

逆に新しい細胞が生まれてくるためには、角質細胞がスムーズに剥がれる必要があります。そのためには適度な乾燥状態が必要となります。つまり、健全な新陳代謝を促すためには、しっとり肌よりサラサラ肌の方が適した状態と言えるのです。

炎症の慢性化がクレーターをつくる

つまり、皮脂は保湿機能の一部として機能しているのですが、放置すると組織を破壊する非常にやっかいな存在なのです。

だから、顔や背中など皮脂腺の多い、皮脂の分泌量の多い部位は炎症が発生しやすく、逆に皮脂腺が少ない部位は、腕や太ももの内側などはキメ細かい肌となっているのです。

どうすれば皮脂の酸化を防げるのか?

では、分泌された皮脂の酸化を防ぐためにこまめに洗顔すれば良いと思われるかもしれませんが、実際にはそう簡単にはいきません。

過剰な洗顔で皮脂を取り過ぎると、肌は乾燥していると誤解して過剰に皮脂を分泌します。さらには、その過剰な皮脂分泌によって皮脂腺が肥大化し、毛穴が隆起して毛穴が目立ってしまうことになります。

過剰な洗顔で皮脂を取りすぎることによる弊害

また、過剰に洗顔すると油分を失い表皮が薄くなり、結果的に自家保湿膜というバリア機能を失ってしまいます。バリア機能を失うと、肌が保湿されないので細胞にとってもっとも重要な水分が蒸散しまい、乾燥肌、敏感肌となります。さらにその状態の肌では悪玉菌が増殖して炎症を起こし、紫外線によるシミを発生させる原因となるのです。

逆に、バリア機能があれば水分の蒸散を防ぎ、悪玉菌の増殖を抑制して紫外線による損傷から守ることもできるのです。

そのためにも皮脂を制御することがとても重要になります。皮脂をいかにコントロールするか。

ここがポイントとなるのです。適度な乾燥、それは保湿力を失わない程度の乾燥状態を維持することが健全なターンオーバー(肌の新陳代謝)の条件と言えるのです。

驚異の働きをする「皮膚常在菌」

では、人工的に皮脂を制御することは可能なのでしょうか。または、分泌された皮脂が過酸化脂質に変質するのを防止することは人工的にできるのでしょうか?答えはいずれも「NO」です。

皮脂の分泌量は、その人の体質や食生活に依存するので、皮脂を制御する化粧品は存在しません。

そこで我々が着目したのが微生物です。
微生物の力で分泌された皮脂を無害な物質、いや、有益なものへと変換させてくれるのです。

その微生物とは何か?なぜ、微生物が分泌された皮脂を無害化できるのでしょうか?次の節を読み進めれば答えがわかります。

「皮膚常在菌」の種類と働き

皮膚常在菌には様々な種類がありますが、顔全体には約200種類の菌が存在し、1㎠あたり100万個の菌がいると言われています。

皮膚に生息している微生物

その中でも代表的な菌は、美肌菌、アクネ菌、黄色ブドウ菌です。
それぞれの種類の菌について、以下にて説明します。

<美肌菌>

「美肌菌」とは肌に生息している美肌効果をもたらす菌のことです。
学術的な正式名称は「表皮ブドウ球菌」と呼ばれています。
電子顕微鏡で見ると、下図のような丸いブドウの形をしています。
皮膚の表皮に生息しているブドウの形をしている菌、だから「表皮ブドウ球菌」という学術名称が付いているのです。

美肌菌の電子顕微鏡写真

この菌には、主に以下の3つの働きが存在します。

  • 皮脂からグリセリンを含む天然クリームをつくり、紫外線や水分の蒸散から肌を守る
  • アミノ酸などの肌の栄養素をつくる
  • 肌を弱酸性に保ってくれる

先程ご説明した角質層と皮脂膜を合わせた自家保湿膜の中に存在してアミノ酸などの肌に必要な栄養素をつくっているのです。

美肌菌が肌の栄養素を作る

美肌菌は肌が必要とする保湿成分も栄養素も作ってくれるのです!美肌菌がたくさん存在する人の肌は、肌トラブルはほとんど無く、肌のキメが細かく、また、美白に見えるという特徴があります。

<アクネ菌>

次に「アクネ菌」は、毛穴に生息する嫌気性菌で、空気がないと増殖します。アクネ菌はニキビをつくる原因となる菌と認識されています。しかし、私たちの研究で明らかになったことですが、「アクネ菌」は完全なる悪玉菌ではなく、肌を弱酸性に保つという良い作用もあるのです。

下図の左側の写真はアクネ菌の顕微鏡写真です。ちょっと細長い形をしています。アクネ菌が多く生息している箇所に紫外線を当てるとオレンジ色の光を出すという性質があります。下図の右側の写真が肌に紫外線を当てた状態で撮影したもので、毛穴のある箇所がオレンジ色に光っているのがわかります。

アクネ菌の拡大写真

ニキビ肌の方の皮膚にはアクネ菌が多いのは確かに事実ですが、ニキビが全くなくきれいな素肌の方でも、ニキビ肌の方よりアクネ菌の量が多い人もたくさん居ます。

アクネ菌が多いというだけでニキビになるという認識は間違いです。アクネ菌が適量に存在している状態は、肌に潤いをもたらすためにはとても重要なことです。

アクネ菌が居るからニキビになるのではなく、毛穴が新陳代謝のアンバランスなどの理由によって塞がってしまって、その中で異常増殖した暴れたアクネ菌によってニキビになるのです。

<黄色ブドウ菌>

「黄色ブドウ菌」は、アルカリ性環境を好む完全なる悪玉菌であり、最近の研究では、アトピー性皮膚炎や肌荒れの原因菌と言われています。

この菌は、電子顕微鏡で見るとブドウのような形をしていて、大量に培養すると黄色を発するようになるので、「黄色ブドウ球菌」と呼ばれています。

黄色ブドウ球菌の写真

<マラセチア真菌>

マラセチア真菌はカビの一種で脂性肌の方に多い傾向があります。皮脂や湿気が多い場所を好みます。

マラセチア真菌の電子顕微鏡写真

マラセチア真菌は、大量に増殖するとニキビや脂漏性皮膚炎などを引き起こしてしまいます。下図のような集中して発生するポツンとした丸いニキビは、マラセチア真菌が原因であることがほとんどです。

マラセチア真菌によって引き起こされるニキビ

美肌菌とアクネ菌が肌に与える影響

美肌菌とアクネ菌は、肌のpHをコントロールする働きがあります。通常、人の肌は弱酸性でpHは4.3~5.5と言われています。

なぜ、人の肌は弱酸性に保つことができるのでしょうか? それは、美肌菌とアクネ菌と深い関係にあります。

美肌菌とアクネ菌は、肌から分泌された皮脂をエサします。これらの菌が分解した皮脂が遊離脂肪酸となり、それがpHを弱酸性化しているのです。

美肌菌とpHの関係

この2つの菌がないと肌の環境がアルカリ性に傾いて黄色ブドウ菌などが増え肌荒れの原因となってしまいます。

なぜ皮脂が分解されると、肌のpHが酸性に寄っていくのでしょうか。それを理解するために、皮脂の分子構造について知る必要があります。

皮脂はグリセリン1つに対して3つの脂肪酸を持つという分子構造をしています。美肌菌とアクネ菌は、リパーゼという分解酵素を出して皮脂を分解します。

そして、皮脂が分解されると、保湿成分である「グリセリン」と、酸性成分である「脂肪酸」の2つの成分に分かれるのです。

美肌菌とアクネ菌が皮脂を分解
美肌菌とアクネ菌が皮脂を分解するときに酵素を用いる

分解産物の一つであるグリセリンは保湿作用で肌を守ってくれます。一方、脂肪酸は肌を弱酸性化することで、黄色ブドウ球菌の増殖を 抑えることになります。

皮脂を分解してできた成分の役割

このように美肌菌とアクネ菌のコンビネーションによってやっかいな皮脂を適度に分解して、その人の肌に最適なサラサラ肌をつくりならが新陳代謝を促進し、さらには悪玉菌を抑制する働きをしているのです。

美肌菌のメカニズムのまとめ

美肌菌のメカニズムをまとめると、肌の栄養素をつくり自家保湿膜を強化する一方で、皮脂を分解して天然クリームをつくり、皮脂の酸化を防いで細胞を損傷させない働きがあると言えます。

これは、従来の化粧品では決してできなかった働きなのです。
従来の化粧品は、化学成分だけで肌の外部から保湿成分や栄養素を補おうとします。外部からの化学成分は、肌に塗ったときにしか肌に存在しないし、時間が経つにつれて蒸発したり汗などで洗い流されたりします。

しかし、美肌菌によって作られる保湿成分や肌の栄養素は、肌に美肌菌が存在している限り、24時間365日ずっと保湿成分と栄養素を作り続けてくれるのです。しかもその保湿成分や栄養素は、肌の外部から与えるのではなく、肌の角質層の中で生成されているのです。

美肌菌とアクネ菌のバランスの大切さ

毛穴に生息するアクネ菌も皮脂を分解してくれますが、増えすぎると異物として認識されて炎症反応を誘発してしまいます。つまり、一定数は必要でも多すぎると炎症を発生させるという負の側面もあるのです。

従って、美肌菌とアクネ菌の良いバランスを保つことが重要になります。良いバランスとは美肌菌を優位に保つことです。

皮膚常在菌をコントロールできる成分の探索

そんな皮膚常在菌のバランスを調整するために、私たちは、数千以上ある化粧品成分を使って、日々地道にこれらの成分が美肌菌やアクネ菌などの皮膚常在菌に与える成分を調べて、その結果をすべて記録しました。

成分とその配合比率のバリエーションから皮膚常在菌のバランスを保つ比率の最適解を得るためには、AI(人工知能)も活用しました。バイオロジカルなデータをAIにインプットして、その結果に基づく成分と配合比率で試作しての実験、この繰り返しによってようやく、悪玉菌と抑制して、美肌菌を優位にするためのバランスを調整する美容液が完成したのです。

肌本来の機能を取り戻すために

私たちは、肌に生息する微生物に着目して化粧品開発を行っていますが、その微生物の本来の役割は、自家保湿膜を機能させることです。 自家保湿膜さえ機能すれば、肌は子供のときのような美しさを取り戻すことが可能となるのです。

世の中には、塗っている間だけの一時的な保湿感を追求したり、塗っている間だけ肌をきれいに見せたりするという自家保湿膜を破壊している化粧品は多くあります。
私たちの挑戦は、そんな化粧品に対する挑戦でもあります。

これからも、肌本来の機能を取り戻すことを目的にした商品開発を行い、みなさまに愛される商品づくりをしていきたいと考えています。