商品開発のきっかけ
皮膚科学の学術研究は日進月歩です。近年における大きな発見の一つに皮膚常在菌の研究があります。腸内細菌と同じように皮膚にも細菌の生態系が存在し、その生態系が破壊されると肌トラブルが起こることが分かってきました。
なかでも美肌菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌は、従来の化粧品では不可能だった働きをしてくれることが解明されつつあります。
また、私たちの研究によりニキビの原因菌として殺菌ターゲットとなっているアクネ菌も実は美肌菌とのコンビネーションで善玉菌として働いていることも分かりました。
実はこれらの知見は、日本国内にある美容クリニックと提携して130項目の臨床データと顔の各部位ごとの常在菌の種類と常在菌数の3,000人以上のデータを収集、解析した結果なのです。
このプログラムのなかで気づいたことは、多くのお金をかけて積極的にスキンケアをしている人ほど肌質が悪いということでした。病的なほどに表皮は炎症を起こして、肌が薄く黒ずんでいたのです。それは加齢によるものではありません。20代でもそんな人が多くいるのです。そんな彼女たちの美肌菌を測定すればかならず「ゼロ」という結果でした。過剰なスキンケアにより、美肌菌がいなくなっているのです。
つまり、肌を美しく保つ美肌菌が生息できる環境ではないのです。逆に、美肌菌がいないから肌質が悪化しているとも言えます。
では、美肌菌を増やせば肌がキレイになるのか、といえばそうとも言えないのです。美肌菌が多すぎてもトラブルを起こすことがあるのです。
つまり、美肌菌を含んだ善玉菌と悪玉菌のバランスを良くなれば肌質も良くなるので、常在菌バランスを改善維持するための化粧品を開発すれば、肌はキレイになる。そこにフォーカスした商品開発が始まったのです。
実験の失敗から薄々気づいたスキンケアの真理
私たちはまず美肌菌を増やすことに着目しました。
なぜなら肌がきれいな人はたくさんの美肌菌を持っているためです。
そこで、私たちは美肌菌を増やす成分を実験によって選定し、それを試作品に入れてモニター試験を行いました。また、美肌菌自体を肌から採取し、それを実験室で大量に培養して、生きている美肌菌を肌に戻してみることもしました。
しかし不思議なことに美肌菌を増やした当初は一時的に肌の調子が潤って良くなるのですが、その後、継続して使用するとコメドやニキビができた人が多発してしまいました。
次に、アクネ菌がニキビの原因になるのではないかと思い、アクネ菌の殺菌を試みました。アクネ菌の殺菌実験に使ったものは、「強酸性水」という電気分解によってできた極めて酸性度合いが強い水のことで、医療現場や食品工場の殺菌にも使われているものです。「強酸性水」の殺菌効果はすさまじく、アルコールと同じように、30秒もすれば細菌を殺すことができます。しかし、アクネ菌は毛穴の奥に存在するため、もっと長い時間殺菌する必要があります。
もし、殺菌しようとしてアルコールを肌につけたとしても、つけた瞬間にすぐに皮膚がヒリヒリしてしまい長く試験をすることができません。しまし、強酸性水なら、もとが水なので、アルコールのように刺激は感じず、長く肌につけていることができるのです。だから、強酸性水を選定したのです。
私たちは、寝る前の自分の肌に強酸性水をたっぷりつけて、翌朝に起きてアクネ菌の量を分析しました。
翌朝にはアクネ菌がすべて死滅して、ツルンピカーンの美肌になっていると期待していました。
しかし、不思議なことに、翌朝起きてみると、大変なことが起こっていました。
毛穴は広がり黒ずんでおり、肌は炎症を起こしてしまい、肌は油っぽくなりました。最短最速で美肌になるどころか、最短最速で肌荒れを起こしてしまったのです。
アクネ菌の量を調査したところ、なんと前日の2倍以上にも増えていました。アクネ菌を殺菌するつもりが、結果的にはアクネ菌が大量に増えていったのです。
その後数日に渡ってニキビが大量発生してしまい、もとの肌の状態に戻るのに大変長く時間がかかりました。
ここで私たちは、アクネ菌を殺菌してはいけないのだということをはっきりと思い知ることができました。
上記で示した実験は数多くある実験の中の一例ですが、私たちは実験の観察過程で、「皮膚常在菌は、増えすぎても減らしすぎても肌にとって悪い結果になる」と気づいていました。しかし、そのときはまだそれがどういう原理でそうなっているのかまでは理解できていませんでした。
そして、上記の実験で発生していたことは、まさに私たちが日々スキンケアで行っていることなのではないかと思いに至るのです。肌に栄養を与えようとして、洗顔後にたっぷり乳液やクリームを塗ったりしていませんか。使用する化粧品の種類にもよりますが、それによって美肌菌が増えすぎてニキビになったり、肌荒れを起こしたりしていませんでしたか。
その一方でニキビケア製品の中ではアクネ菌の殺菌をうたっている製品も多くあります。それを使うことで果たして本当にアクネ菌は死滅するのでしょうか。殺菌による肌への刺激が、皮膚の乾燥を招き、逆に皮脂の分泌を促進してしまい、アクネ菌がさらに増えてニキビが改悪するという結果になっていませんか?
目指すべきゴールを再定義
美肌菌を増やしすぎてもダメ、アクネ菌を減らしすぎてもダメ。
では、どうすれば良いのか、私たちは途方にくれました。
そして、過去に美肌菌ドックで得られたすべてのデータの再分析を始めたのです。再分析を始めてすぐに、驚くべき事実を発見しました。
それは、
「素肌がきれいな人ほど、善玉菌と悪玉菌のバランスが優れている」ということです。
つまり、素肌がきれいな人には、共通する菌量バランスの黄金比が存在しているのです。
菌の絶対量は、人によって大きく異なるので特徴を見つけることができなかったのですが、絶対量から相対比率に視点を変えてみたところ、素肌美人に共通する驚きの黄金比が見えてきたのです。
【その黄金比とは】…
- 美肌菌の比率が40%未満であること
- アクネ菌の比率が40%程度であること
- マラセチア菌の比率が20%未満であること
- 黄色ブドウ球菌が全く存在しないこと
この法則が見えたとき、私たちは驚きを隠せませんでした。
何らかの方法を使って、この共通する菌量バランスの黄金比になることができれば、素肌がきれいになれるのではないかと考えたのです。
そして、商品開発において、使用者の肌の菌量バランスがこの黄金比になるようなものを目指すべきゴールとしました。
菌量バランスの黄金比を目指して再始動
常在菌のバランスを整えるといっても簡単ではありません。
なぜなら、皮膚常在菌にはお互いに似たような性質を持っていて、育菌成分を与えようとすると全部増えてしまいますし、防腐剤を与えると全部死滅してしまいます。特定の菌を増やし、特定の菌を減らすというような器用なコントロールができなかったのです。
しかし、私たちは最後まで諦めませんでした。
「この世の中に、皮膚常在菌のバランスを素肌美人の黄金比に調整できる成分とその配合比率が絶対に存在するはずだ」と信じて、実験を繰り返しました。
市販されている化粧品に含まれる成分(数千もある成分)をメーカーから1つずつ取り寄せて、それが菌に与える効果を地道にコツコツと調べました。また、複数の成分を混ぜ合わせたものが、菌にどのような影響を与えるかのパターン検証もひたすら行いました。
そして、これまでの知見に基づき仮説を立てることで大まかな組み合わせをつくり実験を繰り返したのです。その実測値をベースにさらに仮説を立てて再実験する。
このループを何度も何度も繰り返してきたのです。
研究所内での実験は約1年続けられました。膨大な数の実験によってようやく見つかったのです。悪玉菌を抑制させながら善玉菌を阻害しない、菌量バランスを素肌美人の黄金比に近づける成分と配合が。
それは偶然から生まれた神秘の配合比率だったのです。
しかし、これはあくまでも実験室内での結果に過ぎません。本当に人の肌の上でそのような結果になるかどうかは分かりません。さらにどんなに機能的に優れていてもその使用感が悪ければ評価もされません。そのため、サンプルをつくっては実際に肌トラブルを抱えているモニターユーザ様に試してもらい症状について感想を頂き、さらに改良していったのです。
それからさらに3年。
実験と試作とモニター臨床試験を繰り返した結果、ついに誰もが満足する逸品が完成したのです。
それが今あなたが手に取っている『ハダキララ』です。